3月21日(月祝)の開幕まで1か月となったミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』の稽古場レポートが到着。初稽古を終えた、演出の吉田鋼太郎、主演の柿澤勇人・ウエンツ瑛士の動画コメントも公開。

 

(取材・文:三浦真紀/撮影:岩田えり)
(取材・文:三浦真紀/撮影:岩田えり)

最高のキャストスタッフで贈るミュージカル『ブラッド・ブラザーズの稽古初日に稽古場にカメラが潜入。本読みが行われた。

 

無邪気な子供たちと母としての情念。

美しい音楽に、熱い気持ちがぶつかり合う

 

『ブラッド・ブラザーズ』の稽古が始まった。最初にカンパニー全員の紹介があり、演出の吉田鋼太郎が語った。吉田は1991年の日本初演でサミー役を演じており、作品に対する熱意も並々ならぬものがうかがえる。

 

演出:吉田鋼太郎
演出:吉田鋼太郎

 

「初演時に感じたことですが、この作品は芝居の上手い下手というより、どれだけ演者がリアリティに迫れるかだと思います。言い換えるとそれぞれの登場人物と俳優が持つ感情、存在をどれだけ深く掘り下げられるか。双子のミッキーとエディが死んだら、どれだけ深く悲しむのかを大事にしないと成立しません。

 

シンプルな話ですが、ワンシーンごとに細かく描写されていて、どこまでも突き詰めていけそうな演じ甲斐のある芝居です。今回、素晴らしい役者の方々にお集まりいただいたので、自由に心ゆくまで演じていただけたら。私は今回、自分が出演せずに演出するのは初めてです。最初は台詞を覚えなくていいし楽かな?と思いましたが、反対に言い訳ができないですね(笑)。温かい目で見守ってください」

 

早速、本読みが始まる。全体を通すのかと思いきや、場面が終わるごとに吉田は台詞を変更したり、セットの様子や人物の在り方、台詞に込められた思いなどを細かく説明する。吉田の頭の中にとても具体的な絵がすでにあることに驚くが、きっと一度演じた経験が大きいのだろう。

 

生き別れの双子を演じる柿澤勇人、ウエンツ瑛士
生き別れの双子を演じる柿澤勇人、ウエンツ瑛士
ナレーター役:伊礼彼方
ナレーター役:伊礼彼方

 

冒頭、ナレーター(伊礼彼方)が観る者を作品の世界に誘うが、出だしから不穏な雰囲気。吉田はナレーターの立ち位置を、「客観的に見て、ほくそ笑んでる、嘲笑っている感じ」と説明。

 

ミセス・ジョンストン役:堀内敬子
ミセス・ジョンストン役:堀内敬子

 

またミセス・ジョンストン(堀内敬子)らが歌う〈マリリン・モンロー1〉では、「日本語詞が音楽に無理に合っている感じを避けたい」と、細かくイントネーションをチェックし、自然に聞こえる方法を探っていた。貧しいジョンストン家の場面では、激しく元気な子供たち(大人が演じる!)が登場。

 

しかし吉田は「もっとやっていいね。柄が悪く、無法地帯。常軌を逸しているくらいに」と指示、それこそ大騒ぎになった。こんなヒッチャカメッチャカな子供たちじゃお母さんであるミセス・ジョンストンは大変!と思うが、吉田曰く「この物語はミセス・ジョンストンを中心に進む。真っ直ぐな彼女の育てる、生きるパワーがみなぎるように」。堀内はその言葉を受けて、よりエネルギッシュでチャーミングなお母さんへとギアを上げた。

 

ミセス・ライオンズ役:一路真輝
ミセス・ライオンズ役:一路真輝

 

ミセス・ジョンストンがライオンズ家で働き始めると、物語は波乱の方向へと傾き出す。子供が欲しくてもできないミセス・ライオンズ(一路真輝)と、子供を次々と妊娠するミセス・ジョンストンのやりとりには少しヒリヒリするものがある。美しく毅然として、でもどこか不安そうな一路のミセス・ライオンズ。ミセス・ジョンストンのお腹の子が双子だとわかり、まるで取り憑かれたようにその片方を欲しがり始める。二人が心情を吐露する〈我が子〉はとても美しいメロディーで、心が洗われるなぁと聞き惚れた。

 

しかし吉田はこの曲を「欲に駆られた女二人のデュエットだから。子供が欲しい女と楽な暮らしがしたい女。きれいに歌わず、芝居歌で」と一刀両断!

 

ミスター・ライオンズ役:鈴木壮麻
ミスター・ライオンズ役:鈴木壮麻

 

ライオンズ家で育っている赤ん坊をミセス・ジョンストンが可愛がることにミセス・ライオンズが嫉妬するシーンでは、ミスター・ライオンズ(鈴木壮麻)が登場。品の良い紳士らしさが鈴木とぴったりだ。ミセス・ライオンズがミセス・ジョンストンを辞めさせようとする場面はまさに女の対決。吉田は一路に「女の情念の戦い。取り憑かれて!」と指示。この作品の見どころの一つとなるだろう。

 

ミッキー役:柿澤勇人
ミッキー役:柿澤勇人
エドワード役:ウエンツ瑛士
エドワード役:ウエンツ瑛士

 

7歳になった双子が出会うシーンで、ようやくミッキー(柿澤勇人)とエドワード(ウエンツ瑛士)が登場。無邪気で野生味たっぷりのミッキー。「かーちゃん!」「(おもちゃの銃を打ちながら)バーンバン!」を聞いた吉田は、「テンションを上げて!」と発破をかける。そこにやってきたお行儀の良く、ニコニコしているエドワード。吉田は「もっと好奇心に満ち溢れて、生き生きと」とこちらにも気合を入れた。柿澤とウエンツ、このお二人が7歳を演じるとは!素朴で愛らしいやりとりは、この作品ならではのお楽しみだ。

 

リンダ役:木南晴夏
リンダ役:木南晴夏
サミー役:内田朝陽
サミー役:内田朝陽

 

この日の稽古はここで終了。もう一人の幼馴染・リンダ(木南晴夏)とミッキーの兄・サミー(内田朝陽)らが加わり、賑やかな子供軍団がどう立ち上がるのか、この先が楽しみだ。

 

<久留米公演(福岡)>

2022年4月15日(金)~17日(日)

会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール

 

※15日(金)は公演終了後にアフタートーク開催

【登壇者】柿澤勇人/ウエンツ瑛士